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1950年代前半にアメリカでロックンロールが誕生してから、すでに60年近く。
その間、いったいどれくらいの数のロック・バンドがこの地球上に存在したのだろう。
「めれんげ」もそんな無数にあるロック・バンドのひとつなのかもしれない。
けれど、彼らに出会った人にとっては、決して無数のバンドのひとつとは言い切れない何かをココロの隅っこに残されてしまう、そんな素敵なバンドだ。


           Vo,G/許斐正順、G/下村純司、B/金城勝成、 Ds/藤倉雅英。
 

彼らのホットな演奏は、それだけで見ている人を幸せな気持ちにさせてくれる何かがある。


 
 真昼の夢から叩き起こされた ぶしつけな声で午後5時ですと
  忘れないようにセットしたモーニングコール
  夕方なのにモーニングコール
       (お前といられない)

   
11月24日、東京・六本木でのライヴが終わった後、konomiさんはぽつりとこんなことを呟いた。


「今日のお客さんはプロやわ。あんだけはしゃぎまわって、グラスひとつ割らなかったのはさすが。そういうことがあったら場が退くからね。」


あのノリノリのステージの上でそんなことを気にかけるくらい、konomiさんは実はとても細やかな気遣いをする人だ。そして気遣いをする人らしくとても照れ屋で、その照れは歌の中でも独特のユーモアで表現される。
ハンチングとサングラス、モッズ・ファッションでビシッと決めてかっこつけてみても、どこかかっこよくなりきれない気がしてしまう自分を照れ隠しに笑ってみせる、そんなユーモア。思うようにはなかなかいかない世の中で、地団駄踏んだり悪戦苦闘したり、弱音を吐いたり虚勢をはったり、そんな姿はこういっては失礼かもしれないがとてもかわいらしい。そしてそのかっこ悪さまで含めて「らしさ」として、きっと悩んだり困ったりもしながら、最後にはエイッ!と行ってしまう感じが、実はめちゃくちゃかっこいい。


弱さを弱さとして認めた上でそれでもなんとか意地を張って前を向く、さみしいときにはさみしいと呟いた上で、誰かにそばにいてほしいと歌う、大丈夫だよと笑ってみせる。
きらびやかでマッチョな自称ロックにはない、本当の意味でのタフさがそこにはある。
今僕たちの毎日に必要なのは、そんなタフな心とセンス・オブ・ユーモアなのだと思う。

  
雨に負けても 風に負けても 
  気にもならない どこ吹く風さ
  右に行っても 左に行っても かまわない俺はここにいる
       (どこ吹く風)


この「公式海賊盤~Secret Files」には、デモテープやライヴやリハーサルでの音源が収められている。
完成された音ではないからこそのホットな息づかいが聞こえてくる。
泣いたり笑ったりドキドキしたりを繰り返しながら、仲間たちとともにしてきた時間が刻み込まれている。
そしてそれらの音源は、個人的なメモリアルの枠を越えて、当事者ではない者にまでまるでそれまでの時間を共有してきたような気分にさせてしまう何かを持っている。
それはきっと、konomiさんたちが幸せな気持ちを素敵な仲間たちと共有したい、共有できて初めて自分たちの音楽が音楽として響くはずだという想いによるものだろうと思うのだ。
  
  
どうでもいい事を深く考えたり 大切なことをないがしろにしたり
  そんな俺のことを 君はわかってくれる
  どんなに離れてても きっとわかってる

       (君はわかってる)

それにしても。
1950年代前半にアメリカでロックンロールが誕生してから、すでに60年近く。
その間、いったいどれくらいの数のロック・バンドがこの地球上に存在したのだろう。
成功したものなどほんの一握りで、ほとんどのバンドは多くの人の耳に触れる機会を持たないまま、いくつかの騒がしい夜と酒と煙草の煙の中のかたときの高揚感を残して時の彼方にいつしか埋もれてしまう。
それはそれででいいのだろう。
いくつかの騒がしい夜とかたときの高揚感、それは決して人生の目的ではないけれど、そういうものがない人生はとてもつまらない。
でも、できることならば、少しでも多くの人が、konomiさんたちの音楽に触れる機会があればいいと思う。
確かに新しいものなど何ひとつない、バーやパブでのバカ騒ぎが似合うオールドスタイルのロックンロールだ。
でもそこには、ロックンロールの最良のものが確かにある。

 
 新しい部屋の窓から 忍び込んできてもいい
  知らない歌口ずさみ デカイ足音響かせて
        (シャ・ラ・ラ)


   

先日のLiveでいただいためれんげのCD。ちょっとライナーノート風に書いてみようと思いました。
ちょっとかっこよく書きすぎたかな。
でも、かっこいいのでもう一度書いておこう。

        
そこには、ロックンロールの最良のものが確かにある。

 

 

 

 

      FC2ブログ「 日々の糧と回心の契機」 (golden blue)2012年12月2日記事より
 

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